【2026年4月1日施行】離婚後の「共同親権」制度とは?
1.【導入】制度改正が与える影響
2026年4月1日に離婚後の「共同親権」制度が始まります 。これまでの離婚をめぐる法規制が大きく変動し、現在離婚を考えられている方、既に離婚協議を始めている方、そして離婚をご経験された方にも大きく関わってきます 。そこで、今回は、立法を携わった法務省の見解等をもとに今後の共同親権制度の概要を説明します 。
2.離婚後、「単独親権」か「共同親権」か?選択制と裁判所の判断基準
今までは離婚後は単独親権が絶対となっておりましたが、今後は単独親権か共同親権かを選択できます 。協議離婚する場合も、単独親権か共同親権かを選択できます 。
協議が調わない場合、裁判所は単独親権か共同親権かを定めることができます 。
◎ 裁判所が考慮する4つの事情
裁判所は、以下の事情を総合的に考慮して判断しなければなりません 。
① 子の利益
② 父母と子との関係
③ 父と母との関係
④ その他一切の事情
◎ 共同親権が認められないケース(単独親権が必須となる場合)
父母の双方を親権者と定めることにより「子の利益を害すると認められるとき」は必ず単独親権としなければなりません 。
その具体的な場合として、以下が挙げられます 。
(1) 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき
(2) 父母が共同して協議を行うことが困難であると認められるとき(DV・暴力のおそれの有無、対立の根強さなどを考慮)
【専門家からのポイント】 このように、「共同親権」が法律で認められたとしても、離婚後に必ず認められるわけではありません 。個別事案に応じてお子さんの親権者には誰がふさわしいか判断されます 。「共同親権」が認められるためには裁判所の判断基準(子の利益、DV・虐待のおそれなど)を正確に理解し、説得力のある主張や立証を準備する必要があります 。
3.共同親権でも、一方の親が「単独」で親権を行使できる行為
「共同親権」が認められた場合でも、以下の事項は一方の親が単独で行うことができます 。
① 子の利益のため急迫の事情があるとき
(例)入学試験後の結果発表後の入学手続、DVや虐待からの避難が必要である場合が想定されています 。
② 監護及び教育に関する日常の行為
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子の食事の準備や服装を着用させること
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短期間の旅行(海外旅行を含む。)
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子に重大な影響を与えない医療行為、日常的な投薬、ワクチン接種
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習い事、アルバイトに係る法定代理権の行使
◎双方の親の合意が必要な「非日常の行為」の例
上記に該当しない事項(子の転居、子の心身に重大な影響を与える医療行為など)は、双方の親の合意の下で法定代理権を行使することになります 。
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子の転居
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子の心身に重大な影響を与える医療行為
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子の進路に影響するような進学先の選択・入学の手続や高校を進学しないこと又は高校を中退すること
4.「監護親(同居親)」の指定と「監護の分掌」
「共同親権」が認められたとしても、お子さんと同居する親(監護親)を誰に指定するのかは別に考える必要があります 。
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考慮要素: これまでの親権者(監護者)の指定の考え方を踏襲すると考えられ、従前の監護状況、今後の監護態勢、子との関係性や子の意向、別居親と子との面会交流(親子交流)に対する協力的な態度(面会交流(親子交流)の許容性)、別居に至る経緯等が考慮要素となります 。
- 監護の分掌:子の監護を父母が分担することであり、例えば、子の監護を担当する期間を分担することや、監護に関する事項の一部を父母に委ねること 。監護権者の指定もこれに含まれると考えられます。
- 監護の分掌と面会交流(親子交流)の違い: 監護の分掌は、交流にとどまらず、具体的な監護の内容について話し合い、定めるものです。監護の分掌の一環として、現行法下での面会交流以上に非監護者が子と面会できる期間や機会を増やすことができるかは今後の議論を注視する必要があります。
5.既に離婚済みの方も対象!親権の「変更」は可能か?
◎共同親権への変更(単独親権 ⇒共同親権)
既に単独親権で離婚された方でも、改正民法施行後は「共同親権」への変更を求めることが可能になります 。
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変更の要件: 単独親権と指定され何も問題なく親権を行使している場合に共同親権を認める必要性や合理性はやや難しいと考えられます 。この変更が認められるためには、単独親権が指定された経緯や、その後の状況の変化、共同親権を必要とする合理的な理由を示すことが極めて重要です 。
◎単独親権への変更(共同親権 ⇒単独親権)
「共同親権」が認められた後に単独親権に変更するよう求めることも可能です 。このときには、絶対的に単独親権としなければならない事由(子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき等)等が考慮されます 。
6.【結論】不安を抱えたままにせず、まずは専門家にご相談ください
以上のように離婚後の「共同親権」は、離婚協議、離婚調停、離婚裁判を大きく変えることが予想されます 。
ご自身のケースが単独親権になるのか、共同親権になるのか、また共同親権となった場合に何ができるのかは、個別の事情によって結論が大きく異なります 。
施行が間近に迫った今、不安を抱えたままにせず、まずは専門家にご相談ください 。
弁護士紹介
弁護士 秋谷圭太
千葉県我孫子市出身 。札幌市内の法律事務所に入所後、柏グリーン法律事務所へ移籍 。千葉県内だけでなく、現在も札幌市内の離婚事件も手掛けている 。
参照文献
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北村治樹=松波卓也著『「民法等の一部を改正する法律」(家族法制の見直し)の概要』NBL1273号(2024年)18-27頁
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父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁連絡会議令和7年6月30日取りまとめ「Q&A形式の解説資料(民法編)」
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司法研修所編「子の監護・引渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究」21-25,42-49頁

